査察部はいわゆるマルサ
マルサの調査は強制調査です。

ある日突然事業所へ「国税局の査察部」が来たら、どう対応すれば良いのでしょうか?
国税局査察部による「査察調査」は一般的な「税務調査」とは大きく異なります。
査察が入ったら、悪質な脱税行為を疑われていると考えるべきです。
刑事告発される可能性も高く有罪判決を受ければ前科がついてしまいます。
不利益を小さくするには、当初の段階から適切に対処しなければなりません。
今回は国税局査察部とはいったいどういった部署なのか、査察部が来た場合の対処方法も含めて解説します。
国税局査察部とは

国税局査察部とは、税務当局の中でも特に「脱税犯の告発」を目的とする部署です。
一般的には「マルサ」と呼ばれています。
国税局査察部の調査官が調査を行う際には、事前に裁判官へ「令状」の発布を申請し、現場に持参します。
令状があると強制調査ができるので、現場で捜索差押をするのに納税者の承諾は要りません。
国税局査察部が来るのは、悪質で高額な脱税の疑いが濃厚なケースです。
追徴課税も行いますが、主眼は「刑事告発」です。つまり国税局査察部が来たということは、将来的に刑事告発されて脱税犯として処罰される可能性が高いといえます。
国税局査察部の強制調査と通常の税務調査との違い
国税局査察部による強制調査と通常の税務調査(任意調査)にはどういった違いがあるのか、みてみましょう。
査察調査は無予告
一般的な税務調査(任意調査)は、予告があってから行われるのが原則です。無予告で調査が入るのは、現金取引の商売などで「予告すると隠蔽のおそれが高い場合」などに限られます。
一方国税局査察部の強制調査に予告はありません。
ある日突然令状をもった調査官がやってきて、事業所内の資料を捜索差押されてしまいます。
査察調査は強制
一般的な税務調査は任意調査なので、納税者の同意をとって進められるのが原則です。
同意なしに事業所内の物品を差し押さえられ、引き上げられるわけではありません(ただし税務調査官には質問検査権があり、納税者には応諾すべき受忍義務があります)。
国税局査察部の強制調査の場合、納税者の同意は不要です。納得しなくても、強制的に関係資料を引き上げられてしまいます。
起訴される可能性が高い
税務調査の場合、刑事告発を前提とした調査ではないため、起訴される可能性は低いといえます。
追徴課税額が決定し、きちんと支払えば手続きが完了します。前科はつくこともありません。
国税局査察部が来た場合、もともと刑事告発を目的としているので起訴される可能性が高くなります。脱税犯として有罪になると、懲役刑や罰金刑が適用されて前科がついてしまいます。
なお査察部が来た場合にも追徴課税は行われます。悪質な脱税を行っている以上、重加算税がかかるケースがほとんどで、追徴税額も高額になるでしょう。
査察調査が来るのは大規模、高額な脱税事案
通常の税務調査は小規模の申告漏れや無申告事案などでも行われますが、国税局査察部が来るのは大規模で悪質、高額な脱税事件です。
およそ1億円以上の脱税額が見込まれる場合にマルサが来る、と言われています。
証拠をある程度つかまれている可能性が高い
国税局査察部が来る場合、ある程度は脱税の証拠を掴まれていると考えるべきです。
資料を示さないと、裁判所から令状の発布も受けられません。
査察調査への対応方法
国税局査察部による調査が行われる場合、一般的に納税者や関係者へ取調べが行われます。
対応するのは原則的に2人1組の査察官で、国税局の取調室で事情を聞かれます。
社長や事業主だけではなく、経理担当者や取引先、「脱税に協力している」と疑われている関係者も呼び出されて取調べを受ける可能性があります。
取調べは基本的に任意なので、応じるべき法的義務はありません。ただし「調査に非協力的」とみなされると、検察官によって逮捕・勾留されるリスクも発生します。
取調べに応じるべきか、応じるとすればどのように対応すれば良いのかについては、素人で判断するのが困難でしょう。
自己判断せずに脱税事案に詳しい弁護士や税理士に相談して対応を進めるのが得策です。
査察部が来た場合に相談すべき専門家

国税局査察部が来た場合は、税理士だけではなく弁護士にも対応を相談すべきです。
税務関係については税理士が対応できますが、刑事事件になると弁護士の職域になります。
またすべての税理士や弁護士が査察案件に対応しているわけではありません。
査察案件を取り扱った経験のない人も多数いるので、専門家の選び方に注意する必要があります。
適切に対応してなるべく不利益を小さくするには、査察案件の経験豊富でノウハウを蓄積している税理士や弁護士を選ぶべきでしょう。
「税務のミカタ」では、査察案件に対応している税理士の紹介も可能ですし、調査が進んで刑事事件に発展しそうな場合、脱税事件に積極的に取り組んでいる弁護士も無料でご紹介できます。
※弁護士法27条、同72条、弁護士職務基本規定13条により紹介料の授受が禁止されていますので紹介先の弁護士からも依頼者様からも報酬は一切頂きません。
ある日突然国税局査察部が来て対応に困っているなら、一刻も早く専門家へ相談しましょう。